2010年9月6日月曜日

「貨」「幣」という文字の原義と「貨幣」の本質について

一海知義という人の論文『「貨」「幣」という文字の原義と歴史』は、貨幣の「流動性」を文字そのものの成り立ちから解き明かしてくれていて、面白い。全文引用したいが、そうもいかないので、要点を紹介してみよう。

<漢字の字義を知る方法の一つは、その文字をふくむ熟語を作ってみることである。・・・
財貨 貨殖 貨産(財産、たから)
貨幣 金貨 通貨(金銭、おかね)
貨物 貨車 雑貨(荷物、品物)
・・・・
「貨」の字を分解すると、「化」と「貝」の二文字に分かれる。・・・>

「貝」はすでにTwitterであきらかにしたように、元祖は「子安貝」(そのカタチが女性を象徴している) のことで、特に西アフリカのダホメ王国では「金」よりも「貨幣」として重宝された。

< 財 貧 貴 買 資
賃 賄 賂 購 贈 >(すべて金銭に関係する文字)

<「化」の方はどうか。・・・「化」の左側は「人」、右側は「人」が体位を変えたで、 
「化」は人が別の人、あるいは別の形に変わることだ・・・
化石 化合 化身 化物
変化 悪化 開化 俗化
・・・・・
この「化」(変化)と「貝」(金銭)とを組み合わせた文字「貨」について、
おおむねの字書は、
さまざまな品物にかえることのできる金銭。(貨幣の流動性ーkumagoro)
あるいは、
金銭によってかえられた商品、財産としての品物。
などと説明する。これが「貨」の原義だというわけである。>

もう一方の「弊」も二つの文字「敝」と「巾 」に分解されたうえで、

<すなわち「幣」は、手にささげ持って神や天子に献上する布。「ぬさ」「ささげもの」
これがのちに「紙幣」の意に転用される。
したがって「貨幣」の原義は、「コイン」(硬貨) と「おさつ」(紙幣)である。>

と、その「原義」があきらかにされる。(まっ、このあたりは漢字学者のひとつの解釈だと思っていた方がいいかもしれない。)

それから、「貨幣」という文字がはじめて使われたのが中国の『後漢書』で、2000年来その語義を変えることなく使用されて今日に至っているということだが、「電子マネー」の登場で「貨幣」はまたもう一つの形を手にしてしまった。そしてそのことは、「貨幣」の「原義」を、「貨幣」の「本質」としてあらわに変化させずにはおかない。「貨幣」の「原義」は、「信用」という二文字をその「本質」として内に含むことになったのだ。
「貨幣」が投機の対象になるのは、この「信用」(の格付け)があるからに他ならない。
今や「貨幣」は、流動的にいろいろなモノにその姿を変えるだけでなく(先行き経済的に不透明なときは、貨幣は退蔵されてその姿を変えてくれないのが問題だが)、「貨幣」自身の「価値」(信用度の評価)が流動的に(あるいは投機的に)変動させられている、というのが各国通貨の悩みの種になっている。(もちろんほくそ笑んでいる国もあれば、ニンマリしている人間もいるだろう。)

貨幣の「流動性」とは、「人生はままならない」という魔物の 謂いでもある。

0 件のコメント:

コメントを投稿